日本のいちばん長い日


<予告編> 
世界大戦末期、天皇が降伏の決意を御前会議で表明してから、一方では相手国に文書で伝え、一方では国民にラジオ放送で伝えるまで、1945年8月14日から15日までを追った集団劇だ。当時の東宝の勝負作だからオールスター編成。主役級が漏れなくという感じで出てくる。だから内閣の面子もどっしりしている。
その中でも主役級は陸軍大臣三船敏郎(たとえばこれ)、剛直な軍人らしく、もちろん重量感も十分だ。凄絶な大見せ場もある。対立する海軍大臣山村聡これはいまいちだが)も重みじゃ負けない。総理役は笠智衆これ的な)。例によってひょうひょうと。あとは誠実な役ならこの人、の小林桂樹この役好き)が皇居の侍従、官位はたいしたことないがかなり重要な役だ。

一方、そうとうな存在感で主役級と対抗するのが、終戦玉音放送を阻止しようと決起する陸軍の若手将校たちだ。なかでも高橋悦史黒沢年男はストーリーのもう一方の核をなすポジションで、彼らが終始叫びつづけているので結果映画全体もそうとう絶叫のイメージがある。当時はそんなに名前が売れていない若手だったろうけど、役に重ねあわせたのかもしれない。NHK局員役で1シーンだけ現れる加山雄三(当時売り出し中)は1人戦後顔だ。そのほか脇役も重要人物ばかり。地方の反乱軍役、天本英世たとえば)、埼玉の航空隊指揮官、伊藤雄之助これで怪演)、そのほか決起に右往左往する上官たちもそれぞれ妙に説得力があるのも当然の配役だ。ほぼ唯一女性キャラはやはり新殊三千代(これが好き)。
物語の基本トーンとして室内劇で、会議室シーン、組織の室内での口論や闘争、対話、わずかに映る屋外は皇居の庭の一部と路上くらいで、しかも夜だ。つまり絵面は相当に地味で、大作のわりに画面的なカタルシスはあまりない。たたみかけるテンポの会話劇、役者の演技をみる映画だ。