さくらん   監督蜷川実花


<公式> 
主人公土屋アンナは、表情が決まったときは、原作安野モヨコの絵のような、白目が目立つ巨大な瞳のキャラクターを完璧に再現する。ところが角度や表情によっては突然単なる下膨れのエキゾチック・ウーマンに変わる。そういう意味では菅野美穂のほうが、おいらんらしさをクラシックに演じきっている。
ビジュアルイメージはいわゆる「今風解釈した時代劇」モノの中では独自のものだし、モダンにした部分が決してチープになっていない。最大の問題は脚本、キャラクター設定が陳腐だということだ。子供のときから同じ境遇の「同志」的な幼なじみに惹かれてオイしい結婚話を振り捨てるという古典的ラブストーリーで、キッチュな絵とベタでしめっぽい(特に後半の)主人公のあり方がマッチしていない。幼なじみ役の安藤政信はぴったりのサブキャラぶりだ。