夏至   監督トラン・アン・ユン


<参考> 
おなじ監督の2000年の作品。スタイルは『パパイヤ』とほとんど変わらない。視覚以外の気持ちよさを感じさせるマジックは続く。古都にすむ3姉妹の、伝統のスタイルに今風テイストをうまく取り入れた暮らし。こんどはロケーション撮影がふんだんに使われていて、都市やちょっとした田舎、それに絶景の海辺などのベトナム各地の風景が写し取られる。見ていて楽しい、美しい映像だ。
ただ、ベトナム系ではあっても、フランス出身の監督による、オリエンタリズム的な視線なのかな、とも思う。この「美しいベトナム」の切り取り方はたぶんかなりファンタジックなものだ。3姉妹とその夫たちの「何して食べてるんだ?」的ありかたも含めてね。この微妙さは、監督自身が表面的にしか親の母国を見ていないということでは必ずしもなくて、欧米の観客の視線を理解している彼が、あえてその視線に重ねあわせて風景を再構成している、というところにあるだろう。
エロスとしての水と湿度がまたそこかしこにあらわれる。水浴びする女たちの髪の表現は『パパイヤ』から繰り返されている。