インフライト・ムービーズ2024

ひさしぶりに機内で見た映画特集。

 

🔷グランツーリスモ

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グランツーリスモのエリートプレイヤーたちを実車でトレーニングして勝者を決めるGTアカデミー。勝者はプロのレーシングドライバーの夢を叶える....ニッサンがバックアップするプロジェクトは2008〜2016年まで世界各地でチャンピオンを輩出した。本作は2011年アカデミーのヨーロッパチャンピオン、ヤン・マーデンボローがレースデビューし、2013年ルマン24hでクラス3位でゴールするまでの物語だ。監督ニール・ブロムカンプ。

マーデンボローは2011年にレースデビュー、ルマンに3度出場して、2016〜2020年は日本のSUPERGTで走っていた。ぼくはグランツーリスモもやらないし、レースもそこまで熱心なファンじゃないから、ぜんぜん知らなかった。国内レースファンにはお馴染みの選手だったんだろう。本作でも撮影時のドライビングを担当している。

映画は王道のスポーツ成長物語。引きこもり系の少年が実はとんでもない才能を秘めていて、それが野心的なプロジェクトと出会って一気に開花する。丹下段平系のベテランレースディレクターがいい感じの師匠となって、厳しくも暖かく彼の成長と挫折を見守る。話の流れで、マーデンボローはプロジェクト唯一のドライバーに見えなくもないけれど、3年前からアカデミー優勝者はいて、ちゃんと先輩プロドライバーになっていた。

主人公は非の打ち所がない好青年でプロジェクトリーダーたちもいいやつばかりなのでお話はするするとスムーズに進み、ドラマのような(しかし実話の)挫折を経てクライマックスに到達する。おっさん観客からするとレースシーンの映像的快楽、ドライバーやディレクターたちの一癖ある感じなど『フォードvsフェラーリ』の味わいにはちょっと足りず、ブロムカンプといえば思い出す『第9地区』のような独特さはないけれど、気持ちいい一作なのは確かだ。

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(c)2023 sony pictures


 

🔷私ときどきレッサーパンダ

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13歳になった中国系カナダ人の女の子メイの変化と、それを心配しながらなんとか自分が思う道にはめようとする母のミンの物語に、厳しいおばあちゃんや母系の親族たちが代々受け継いできたレッサーパンダの伝説が絡んで、ようするに中国系母娘の相克が壮大なスケールとなって大爆発する...『エブエブ』がまさにそれじゃないか。お父さんが無害で包容力主体の存在になっているところも同じだ。

本作は監督・脚本ドミー・シー以下、女性スタッフ主体で製作されたそうだ。ドミー・シーは20代半ばで名作『インサイド・ヘッド』でストーリーボード(絵コンテ)を担当している。初めから超有望若手だったんだろう。『インサイド・ヘッド』も実在感がある北米の都市を舞台に、少女の心理的な葛藤を象徴的、それでいてポップに、まったく別の絵で置き換えてみせるという、ちょっと共通する感じのある作品だ。

ピクサーらしく、主人公とその友達全員、美少女キャラに陥ることなくそれぞれに愛嬌があって、もちろんキャラの描き分けは髪の色とかじゃなく個性的だ。彼女たちの目下の夢と情熱の対象がBTS的な(と言いつつ多人種構成の)ボーイズアイドルグループなのが、じつに今らしい。

ちなみにメイたちの家は、トロントの街中なのに瓦ぶきの門と塀で囲われた、庭のある寺院だ。トロントのチャイナタウンにはいくつも寺院があるみたいだけど、Googleで見る限りビル形式が多くて流石にそこまで渋いのはない。バンクーバーに少しそれっぽい寺があった。

 


 

🔷オールド

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M・ナイト・シャマラン監督、2021年公開。南国のリゾートにあるシークレットビーチに招待された家族やカップルに起こる異変・・・体をめぐる時間だけが急激に進み始め、帰ろうとしてもビーチからの脱出は不可能だ。やがて時間の進行に耐えられない者から死んでいく。主人公の夫婦と幼い姉弟の運命は...的な物語。

シャマランらしいというか、プロットはじつにユニークだし何やら象徴的だ。招待客には体に不調があるものがそれぞれいる。子供たちは少し目を離した隙に成長してしまい、物語の後半になるとすっかり大人になる。ぎょっとするアイディアだ。

ただ、撮り方やエピソードにどことなくB級感あるいは劇画感というんだろうか、アイディアの怖さを表現しきれず、ドラマっぽさを必要以上に観客に意識させ物語に没入させない何かがある。典型的なのはそれぞれの時間の進み方の表現だ。24時間で50年分進む設定で、子供たちは昼頃にはティーンエイジャー風に、夜にはすっかりアダルトになっているが、翌朝にはそこまで老け込んでいない。それから親たちは夜にはだいぶ高齢者になっているはずだが初老の雰囲気だ。セクシー美女は、顔だけシワメイクをされて象徴劇風の奇妙なルックスを見せる。確かに老婆の肉体にビキニを着せた映像はあまりにも容赦なさすぎるだろう(『ミッドサマー』じゃないんだし)。とはいえ、なんだか全体に計算があっていない感じなのだ。

やがて事件は不幸な偶然じゃなく、お馴染みの大企業の陰謀めいたものがちらつき始める。撮影はドミニカのプラヤ・エル・バジェというビーチ。

 


 

🔷スパイダーマン・ノー・ウェイ・ホーム

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これは流石に飛行機の極小モニターと騒音混じりの音響で楽しむ映画じゃないかもしれない。せっかくの歴代スパイダーマンたちが小さい画面でひょこひょこ飛び回っている感じになってしまった。それにしてもウィレム・デフォーはほんとにあらゆるタイプの映画に呼ばれる人だ。


 

🔷ワイルドスピード1

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『TOKYO DRIFT』しか見たことがなかった。第1作は「潜入捜査モノ」だったんだね。ジャパニーズ90’sカーのレース文化が、LAらしい超多人種グループで描かれる感じは当時新しかったのかも。本作の主人公、シリーズ途中で亡くなるポール・ウォーカーはどことなく妻夫木聡的存在感でありつつ(本人TOKYO DRIFTに出てるが)、ありがちな「他人種に大型新人的に受け入れられる白人」のステロタイプにも見える。その後ファミリーとしていい感じに馴染んでいったんだろう。日本車の締めが横綱級のSupraで、このあとシリーズの顔となるドミニクの「心の1台」として70’sアメリカンマッスルカーのダッジが出てくるあたりもいい。