ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

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ストーリー:IMFのリーダー、イーサン(トム・クルーズ)の次のミッションは世界の命運を握る2つの鍵、文字通りのカギを見つけて手中に収めることだ。自律型のAI、エンティティが世界中のネットワークをコントロールしはじめたいま、そのカギを持つものがエンティティを、世界を支配できる。古い恋人イルサ(レベッカ・ファーガソン)から1つを受け取ったイーサンだったが、敏腕女スリや女殺人者、AIのしもべの男、情報機関の追ってなどが入り乱れて各国を舞台にイーサンは走る.....

正直、コメントはない。もはやトム・クルーズは映画業界的にえらい人すぎるのだ。新型コロナで打ちのめされたハリウッドの制作現場で、自費でクルーズ船をチャーターしてキャストとクルーを感染から隔離し、昔のアクション大作にオマージュを捧げたいがあまり機関車と列車を撮影用に作って、実際に崖から落とし、アクションはもちろん自分で演じるので、死ぬか怪我すると撮影に支障がありすぎるから、傷口が深くならないように撮影の一番最初にもっとも危険な「バイクで絶壁からぶっ飛び」シーンを撮影する。とうぜん万全を期すために1万回以上のバイクのジャンプをこなし、数百回のパラシュート降下のトレーニングを積む。

自分がプロデューサーで資金を調達しプロジェクトをコントロールできるからこれら全てが可能で、他の映画人からすると現実味がなさすぎるレベルのことをこなしてしまうのだ。肉体的にもプロジェクトリーダーとしても。しかも本作はその1つに過ぎない。去年の大作シーンを突っ走った『トップガン・マーヴェリック』も、俳優にクルーに、プロジェクト全体に想像できないような負荷をかけて「ああ映画の格好よさってこういうのだった」的な実写画面をこれでもかと見せた。そんな作品を作り続けてきたのだ。

孤高なまでに実写アクションの前線を走り続けるトム。そのテーマはとにかく「映画館の火を消すな!」下のアメリカ版ポスター画像もOnly in theatersとうたっている。そして僕もトムにシアターに呼び集められた何千万分の一人として、列車から落ちそうになる俳優に体をのけぞらせながら、お腹いっぱいになって劇場をあとにするのだ。

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(c)2023 Paramount Pictures

そんな偉大な作品に、「ストーリーが幼稚」などと言ってはいけないのだ。「また世界の危機」「AIが敵なのに宝石箱開けるみたいなカギ!?」「こいつ首謀者?いやにペラペラ内幕解説してるんだけど」などとしたり顔でいってみたところで意味はない。アクションムービーってこういうものなんだろう。でもなぁ。

映像のルックはアクションの見せ方だけじゃなく、当然のようにクオリティが高く、砂漠や中東の空港、イタリアの古都、アルプスの(実際はノルウェイの)山岳風景、どれも十分に美しい。おもちゃじみたガジェットも抑え目で、電子戦の映像も嘘くさくないし、キャストたちも洗練された衣装とチープさのない顔立ちで、要するにストーリーを少しスケール抑え目にして映像の洗練度に近づけてもいいように思うのだ。MIシリーズ、全作見るほどのファンじゃないから、常連からすれば「それがMI」なのかもしれないけれど、『ローグ・ネイション』とかもう少しほど良いスケールじゃなかったっけ?

ちなみに本作ではアクション担当のキャストも半数以上が女性。なんとなく家父長的にトムが収まっている感がなくもないが、現代風アップデートなんだろう。得意技は違いつつ全員キレのある動きだ。それにしても本作も主要キャストは30代後半から、クライマックスの列車上格闘はどちらも60代だ。大作キャストはキャリア重視というのはわかりつつ、なんだか少々ベテラン寄りすぎと思わないでもない。たぶん、アメリカ本国市場では日本では公開もしないような若年層向け作品が大量にあって、そこでは若手俳優たちが(日本のメジャー作品みたいに)活躍しているんだろう。

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