つみきのいえ


<Movie>
加藤久仁生による短編アニメーション。これもアヌシーで最高賞を受賞している(アメリカ、アカデミー賞のアニメ部門も)。しんみりとしたいい話だ。海面上昇を物語の背景にしつつ、それをうまく舞台装置にして、ある老人の人生の回想を、垂直的な空間の下降におきかえている。短編なのでリンク先を見てもらった方がいいと思うからくわしく書かないけれど、置き換えがすごくうまくいっていると思った。
時間とともに海面は上昇して、老人はだんだんと上に増築して引っ越さなければいけない。だから過去は時間の順に垂直につみかさなっているのだ。現在性のある海面上昇の問題を静かでおだやかな廃墟の未来として描いた。
キャラクターもいい。加藤の作品で『或る旅人の日記』というショートショート集がある。これも建築的な空間への興味が世界観をつくっているけれど(このかんじはちょっと前でいえばたむらしげるとかでもおなじみともいえる)、主人公の旅人の造形がすっとしたくせのない男で、そこが少しつまらなかった。それに比べると『つみきのいえ』は味がある。海外の観客を意識したのかもしれない。