潜水艦映画3本!(その3 ハンターキラー潜航せよ)

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<公式>

ストーリー:バルト海アメリカの潜水艦が消える。急遽派遣された攻撃型原潜アーカンソーは、現場の海域で敵に遭遇、撃退する。その後沈没した米ロの潜水艦を発見、ロシア艦の艦長をレスキューする。ロシア海軍基地で不穏な動きを察知した軍司令部は特殊部隊ネイビーシールズの4名を基地に送り込む。基地では大統領を迎えた軍司令官がクーデターを図っていた....

2018年公開。残念ながら興行収入はあまりふるわなかったみたいだ。たぶん、『レッド・オクトーバー』や『クリムゾン・タイド』と較べても後年名作ランキング的には負けるだろう。なんというか、2作とくらべるとB級感が高まってるのだ。いやB級ともちがうかな、つまりはポリティカル・サスペンスとか人間ドラマとかの要素は薄くて、アクション娯楽作なのだ。

だから視覚的快感はじゅうぶんにある。実をいうと潜水艦3作、見たのは本作が最初だった。だから潜水艦モノのお約束や過去作のオマージュ部分にあまり気をとられなくて新鮮な気持ちで見られ、どのディティールもわりと楽しかった。軍関係の考証をかなりしっかりやっていて、潜水艦の内部セットや人々の動きもリアル指向らしい。実物映像も多いんだろう、嘘くささがない。

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ネイビーシールズの装備や行動はどこまでリアルか知らないけれど、たとえば銃器は東京マルイこのページを見るだけでも、マニアも噛みごたえがある設定になっていそうだ。あと、今の軍事モノらしく、シールズたちの情報収集・通信システムが恐ろしく洗練されていて、現地の高精細な映像をアメリカ本国の司令部でもさらりと共有している。ここまで出来てるか?と思わないでもないけれど、新鮮でもある。

いうまでもなくCGも進歩して、潜水艦VS潜水艦、水上艦VS潜水艦、地上VS潜水艦などいろんなカードのバトルが精細かつ派手に見せられる。プラス、ネイビーシールズの超人兵士たちのたった4名の潜入作戦。本作、アクションの主役は地上戦のほうで、スリリングな見せ場が最初から最後までつづく。ここでもオトコのブラザーフッド的なやつとか「待たせやがって....!(ギリギリで命を救われながら)」的展開とか、隙がない。

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お話自体はわりとファンタジックだ。まず危機の引き金がロシア国防相のクーデター作戦。それで戦争を起こして国内を掌握したいらしいのだが、無理でしょ。大統領を監禁しただけじゃ。基地の部下せいぜい何百人しかいないのだ。米国司令部も「世界大戦の危機だ!」みたいにおびえるのだが、慌て過ぎの感もある。ロシア大統領がプーチンエリツィンゴルビー的な風貌とかけ離れたイケメンマッチョなのも娯楽作っぽい。

アイディアは過去2作にかなり負ってるといわざるをえない。5つのエレメントがきっちりと揃う。そもそもロシア艦艦長と米艦艦長が同じ艦に乗り、協力して、お互いにリスペクトする展開が『レッド・オクトーバー』そのままといえる。

ちなみに米艦とロシア艦はどうやって行き来するのかというと、深海救難艇という小型潜水艇を使う。甲板上部のハッチ付近に吸盤的に吸い付いて、ハッチを開ければ水中を通らずに人が行き来できる。ミスティック級というわりと古い艇で、じつは『レッド・オクトーバー』で使ってるのと同じ艇なのだ。どうりで似てたよ!

クリムゾン・タイド』に似ているのは、冷戦後だから仕方ないとはいえ、ロシア側が「世界の危機」の引き金になるのが同じ一部の反乱だというところ。あと、潜水艦内部は3作で一番リアルらしいんだけど、ブルー系の光が映り込んでる司令室の雰囲気は前2作と共通だ。じっさいはもっと殺風景だと思う。↓の映像に司令室らしい所も映っている。

 本作の主役、米艦の艦長は叩き上げ系。すごく慎重派だ。先制攻撃を避けるために、攻められてもひたすらしのぐ。しかもものすごく人の心に訴える作戦を取ったりする。その結果、最大のクライマックスでは国家を超えた侠気シーンが炸裂し、豪快なまでにすべてが解決するのだ。この展開には思わず笑ってしまった。全体にオトコたちが熱い心で分かりう合う物語である。

本作の潜水艦アーカンソーは現在最新鋭の攻撃型原潜バージニア級。水中で最大34ノットで航行できるそうだから、すごい性能だ。舞台になったロシア海軍基地はブルガリアここでロケしたそう。はじめはアラスカロケで厳冬期のシーンを狙っていたけれど、ロケ環境がきびしすぎてやめになったそうだ。

■写真は予告編からの引用

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