潜水艦映画3本!(その1 レッド・オクトーバーを追え)

日々、こもっている訳である。ぼくの住む三浦半島の片隅には、路上にそんなに人もいないし(例の「神奈川に遊びにこないで!」キャンペーンの影響もあり)、じつは日々のびのびと海辺の空気を吸っているんだけど、そうはいっても行動半径はちいさいし、そんな時は、密閉空間で緊張感あふれる人々を鑑賞するのが逆にいい。

というわけで新旧潜水艦モノを3本連続で一気見。どれも米海軍が主役、だから敵役はソビエト、ロシアで、お話の枠組みはじつに同じだ。

 

レッド・オクトーバーを追え

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<予告編>

ストーリー:ソビエトの最新鋭の弾道ミサイル潜水艦が就航する。艦長は名将ラミウス(ショーン・コネリー)。無音で高速航行できる装置を世界で初めて実用化したこの艦は米ソのパワーバランスを一変させる力を秘めていた。しかしラミウスは突如命令を無視した行動に出る。腹心の部下を連れてアメリカへの亡命を図ったのだ。CIAの専門家ライアン(アレック・ボールドウィン)は攻撃型原潜に乗り込み、母国軍に追われるラミウスの真意を確かめようとする.....

1990年公開。監督ジョン・マクティアナンは『ダイ・ハード』『プレデター』『ラストアクションヒーロー』などでおなじみ、アクションを飽きさせずに見せるタイプ、っていっていいんだろうか。本作、いうまでもなく潜水艦モノ名作のほまれ高い、いわば古典だ。なるほど面白い。そして今回見たアメリカ潜水艦モノの共通項がきっちり揃う。それは…

1. 国家の一大事が1隻の原潜に集約

    3本とも主役は原子力潜水艦だ。3作とも「米ソ(ロ)、一触即発」状況になり、国家首脳たちが固唾を飲んで潜水艦の行方を見守る。なぜか1隻が国家の命運をにぎるポジションになり、行く末は1人の艦長の肩にずっしりとのしかかる。 

2. 見せ場は魚雷戦 ソナー班が影のヒーロー

 潜水艦モノはド派手な海戦じゃない。水上艦が攻撃するときはミサイルや爆雷、魚雷など多彩な武器があるけれど、潜水艦のメインの武器はやっぱり魚雷だ。潜水艦バトルではかならず〈魚雷攻撃ーデコイ(おとり)で回避〉のセットメニューが盛られる。

深海で敵を探知するのはソナー班(正式名称は知らない→ソナーマンというらしい)たちで、どの作品でも指揮官じゃないけれど重要なポジションになる。

3. アメリカ=ロシア(ソビエト)の潜水艦乗り同士の国家を越えたリスペクト

 潜水艦乗りは、軍艦乗りの中でもスペシャリスト。もともと、特に海軍軍人は国を越えて1種の同族意識があるというけれど、潜水艦乗りはよけいにそうなのかもしれない。3作中2作は、敵国側の艦長との対面があり、おたがいのリスペクトが高まる展開だ。

4.コントロールルームが舞台

 3作とも主人公は艦長だ。操舵手、ソナーマンと作戦指令たちが集まるコントロールルームがドラマの舞台になる。深海では電波交信が断たれ、潜水艦は孤立する。艦長の判断が重くなるのだ。艦長と部下たちの意見が食い違い、緊張感が高まるシーンも欠かせない。

5. 狭い、見えない海底をすりぬける船体

 深海では視界は効かない。船は海図を頼りに速度と進行方向を計算しながら海底の地形を抜けていく。ドラマ上、どうしてもごつごつした狭い海底の水路を通過しないといけない。深い青の中、海底の岩すれすれにすり抜ける船体の映像が定番メニューだ。

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本作は前半が1隻の原潜をめぐって米ソ首脳がそれぞれ手を打ち合う、ポリティカルサスペンス調。互いの艦は大西洋を進むだけで戦闘アクションはないが、ここが割としっかりしていてだれない。後半は潜水艦バトル、艦内アクションのパートになる。巨大なソビエト原潜がありえないくらいの運動性能を見せ、敵の攻撃型潜水艦とドッグファイトを繰り広げる。正直、あのサイズの巨大艦がそんなダイナミックに動けるとはいまいち思えないんだけど、まあ見せ場だ。1990年当時の、初期CGが特にバトルシーンでは多用される。素朴すぎてそこはさすがに視覚的快感がない。

全体の印象でいえば、あたり前だけど、さすが名作だ。飽きない。危機感の盛上げもわざとらしくない。ポリティカル部分も軽すぎず納得感がある。そしてキャストがいい。政治家たちも重みがあるし、なによりソビエト軍人を演じるショーン・コネリーのありがたみだ。カツラを付けて白髪になった彼は三船敏郎感もあって、じつに説得力がある。

もう一方の主人公ボールドウィンは好みじゃないが、彼が乗り組む原潜の艦長役、スコット・グレンがえもいわれずいい。グレンといえば『羊たちの沈黙』だが、本コラムでは『ライトスタッフ』の宇宙飛行士、意外なところで若い時に『ナッシュビル』も出てる。軍人役も多い彼だけど、マッチョというより冷静なプロの軍人という感じで、本作でも決してどなったり怒ったりしない、いい味の艦長だ。

本作の原潜は、アメリカ側は代表的な攻撃型原潜、ロサンゼルス級。亡命するソビエトの艦は世界最大級のタイフーン型に架空の推進装置が付いて性能がアップしている設定。見るからに巨大だ。

■写真は予告編からの引用

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