日々ロック


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ストーリー:いじめられっ子の拓郎(野村周平)は高校の同級生と結成したスリーピースバンドでロックにつかる日々。拓郎たちがいそうろうするライブハウスに来たスーパーアイドル咲(二階堂ふみ)は下手だけどストレートなかれらの歌になんとなく惹かれる。ライブを成功させた咲はプロデューサーにたのんでかれらをフックアップしようとするが.....

主人公のキャラは『ボーイズオンザラン』の主人公田西(峯田和伸)のヘタレ期とほぼ同質。ふだんはくにゃくにゃして挙動不審で、ほぼまともに会話ができない。原作でもここまでなの? あまりにもまともなセリフがないから主人公なのにどういう人かいまひとつわからない。で、ライブになると突如格好よくなってシャウトするワケだ。まぁそういうキャラクターなのは分かる。音楽100%男なのはね。そうとう記号的な拓郎くんだ。でも主演の野村周平は峯田@銀杏BOYZほど異形じゃない。アフロで裸だけど、意外とたたずまいがふつうなので、見えないところではまともなんじゃないかと思ってしまう。
お話は簡単そのもの、ひねりゼロ。せっかく咲がチャンスをくれたのにモノにできなかった彼らは、最後に「なんのために歌うのか」やっとはっきりして咲に恩返しをする。クライマックスのライブシーンは何から何までベタベタだ。でもじーんとはする。恩返しができてどうなったのかは見せない。監督の出世作SRサイタマノラッパー』シリーズみたいに、「それでもおれたちは続けるんだ」という後味だ。
ライブハウスとか地方でバイトするシーンとか、このあたりはインディーズ的でもあるけど、演奏シーンはそれなりにしっかり準備したんだろうと思う。上手くはないけどロックバンドに見える。1人プロのドラマーは別カメラで見せたりする。かれは芝居でもやけにいい味をだしている。あとアイドル咲のライブシーンはここに予算を集中した感じで、大きい会場を借りておおぜいのエキストラを入れ、うそくさくなく見せてる(ステージ上に咲以外だれもいなくて機材もなにもないのはそういうものなのか予算なのかわからなかった)。

ヒロイン咲の二階堂ふみは『雨上がりの夜空に』を歌うシーンでは『ソラニン』の宮崎あおいに負けてる感じだけど、キャラクターによくあっていて魅力的だ。彼女がうそっぽくないのはこの映画にとって死活問題だもんね。いっぽうプロデューサー役の毬谷友子はなんか像として古い気がした。『へルタースケルター』の桃井かおりみたいなゴージャス中高年女性で、エレクトリックポップを歌う咲を仕掛ける雰囲気じゃないのだ。あと、ライブハウスのオーナー役の竹中直人。この手の役にはとりあえず直人、という風習もそろそろいいんじゃないか。