人狼 監督 沖浦啓之


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むかーし、東京都写真美術館で、これの設定資料や原画を展示していたような覚えがある。パラレルワールド的な1950年代の東京にちょっと技術世代としては合わないハイテクギミックぽいものがまじる世界。正直このトーンは好きだ。手描きセルアニメでほとんどすべてを仕上げた最後の大作だということで、人体の動きはじつに無理がないし、銃撃シーンやモブシーン(群集シーン)の画面構成も、情報量がすごく多く、しかもちゃんと絵になっている。
キャラクターの造形はこのみがわかれそう。アニメ/マンガ的記号をまったくなくして、ストイックかつ職人技的に人体を再現しているわけで、アニメにつきもののイメージの飛翔みたいなものはない。『イノセンス』もそうだったけど、ときどき「・・・」と感じるときはある。「リアル」の扱い方みたいなところだろうと思う。細田守(『サマーウォーズ』)が言っていた「アニメーションの喜びは、非現実的な派手なイメージを見ることじゃなく、日常のさりげない動きが絵で再現されているところにある」という言葉を思い出した。この映画はSFではあるけれど、それを目標にしている。
画面はつねにアンダー目で薄暗く、キャラクターはあまり表情が変わらなくて、声優も声を張らない。全体の少し夢幻的な雰囲気がうまく保たれている。ただ手描きアニメが苦手なのは車や路面電車の動き。手描きとしてはレベル高いけれど、ここだけはCGのほうが気持ちいい。