おおかみこどもの雨と雪

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ふしぎな脚本ではあった。でも泣けた。気持ちよくね。よかったのは親子三人が雪の山を駆け回るシーンだった。親が、とくに母親が全開で子供と走り回れる時期なんてホントに短い(スポーツしてれば別だけど)。その一瞬のかがやきを祝祭としてテレもなく描いた。
見た人が掘り下げずにいられない母性についての話はやめとく。けっきょく、母親の花がなんでおおかみこどもの姉、雪をだれが見ても気になるくらいにほおっておく話にしたのか、よくわからないのだ。
自然描写はジブリ的な手描きリアル+CGの雪や動きの表現で、十分に美しかった。こういう技法は刻々と変わっていくんだろうし、ストレートに絵画的な『イリュージョニスト』や、いま公開してる『かぐや姫の物語』のほうが古くなりにくいかもしれない。この映画はCGとの取り合わせもあるんだろう、手描き風タッチの味は宮崎駿モノよりも薄味になって、実写を見るのにい近い心地よさの映像だった。
それに比べて、ぼくの好みからするとやっぱりキャラクターは背景から浮いているし、あまりにもマンガ寄りすぎる。高畑勲がこういう描き方について話しているインタビューがあった。この技法は、主観的に物語に入り込ませるためなんだという。一つの絵として外から観賞するなら人と背景のタッチがなじんでいるほうが完成度が高いはずだ。『イリュージョニスト』、高畑監督の『となりの山田くん』もタッチの統一感への挑戦だった。それに対して、主人公をシンプルで記号的なキャラクターにして観客が同一化しやすくすることで、リアルに描いた空間を体験しているみたいに見てもらうということだろう。たしかにこの映画も『カラフル』も主人公の顔にくせがなさすぎるくらいないのだ。
僕の好みは別として、なるほどとふにおちた解説だった。ていうかそれ的なこと書いてるなカラフルで…