デス・プルーフinグラインドハウス 


http://www.grindhousemovie.net/


アメリカンお馬鹿映画のアイコンがぎっしりという感じで、妙なところが笑えたりする。
なかでも後半でてくる女の子の一人が意味もなく(いちおう説明されていたような気はするが)チアリーダーの格好でそこら中を歩き回っているコスプレ的あり方。しかも絵に描いたようなレッドネックと二人きりに・・・そうとうおかしいでしょうこれ。あとは必然性のない唐突なエロ。これもお約束映画らしい馬鹿っぽさだ。
後半のガールズ・トークの中では「バニシング・ポイント」はじめカーアクション映画のタイトルがあがっていたけれど、テイストとして思い出すのはやっぱり伝説のエロ師、ラス・メイヤーの「ファスター・プッシーキャット!キル!キル!」だ。特にラストね。
この映画を見たのはずいぶん昔だから細かい部分は正直わすれた。エロとして作られたはずなのにあまりのシュールさに確実に「実用性ゼロ」となっているカルトムービーである。本来エロ担当で出てくるはずの3人娘が、とても妄想をかき立てられないような暴力性とパワー(と極悪風メイク)の持ち主なので結局ジャンルすらよくわからなくなり、最後に3人が仁王立ちになって「あっはっはっはっ」と大笑いするような(たしかこんな感じの)映画だ。
デス・プルーフはこれほどシュールではない。場面転換はたまにわざと唐突に切ったりしているけれど、それも「ファスター」のいい加減すぎて逆にアバンギャルドになっているカット割にくらべればまともで、話のつながりだってわかる。悪役が前半できっちり悪さを発揮して女たちはやられっぱなしになり、充分に観客のストレスをためたところで後半もそうかと思うと女たちが逆襲して・・・という明快なカタルシスがえられるつくりだ。タランティーノ自体、基本的に強い女が好きなわけで、このテイストはどんぴしゃなのだろう。「ファスター」のリメイク計画もあるとかいう話。

というわけでおなじみのぐだぐだ喋りも充分にあり、女の子も色んなタイプの美女を用意して楽しめる映画なんだが、肝心のカーアクションはもうちょっとヒネリが欲しかったかなあ。途中まではびっくりさせたりはらはらさせたりで飽きないがクライマックスのカーアクションがちょっと新鮮味にかける気がする。カーアクションのアイディアもいままで無数に研究されてきてるわけである。古いところでは「フレンチ・コネクション」や「ブルース・ブラザース」、最近だとCGがメインかもしれないが、「ダークナイト」のトレーラーアクションも新鮮だったかもしれない。ちょっと前の日本映画の、見るからに10万円くらいで買い集めた中古車だけで撮ったしょぼいカーアクションもしみじみとした寂しさがあってよかった。
そんななかでこの映画、まあこれもC級テイストなのかもしれないけれど、いかにも撮影しやすそうな何もない田舎道で激しくカーチェイスが繰り広げられ、見せ場もいくつかあるとはいえ、だいたい既視感のあるアイディアだ。まあラストで笑わせられて爽快にシめるので全体にはOKというところかな。
画面の処理の仕方や細かい細工など、「スタイル」の表現はいつもながらのかっこよさで文句なし。

結論。「ほぼ善兵衛の期待通り!」