ザ・ドライバー


<予告編>
1978年、ウォルター・ヒル監督。不思議なことだけど、スピーディーなアクション映画なのに、何回見ても途中で寝落ちした。だから最初なんてシュールなまでに途中経過を省略した話なのかと思ったすまん。もちろんそんなことはなくて、というより、むしろ話に決着つけるために出来事を詰め込みすぎて、山場が分かりにくくなってる気さえした。最後は意地になって寝落ちした部分をいちいち戻して見返したんだから間違いないよ!なんか同じシーンを何度も繰り返す気がしたのも気のせいだろう。
やっぱり、この映画をふまえた『ドライヴ』を比べたくなる。とくに序盤、主人公のたたずまいはこの映画をお手本にしているなぁと思う。犯罪者を現場から逃がすのが彼の仕事。寡黙なブロンドの青年という感じで、指定の場所にいくと車の中でじっと待つ。この映画の主演ライアン・オニールと、おなじライアン、『ドライヴ』のゴズリングは横顔がよく似ている。犯人が乗り込むとすぐパトカーに見つかってカーチェイスがはじまる。ドライバーは表情も変えないでゆうゆうと逃げつづけ、その顔は街灯にてらされて青く光っている。

オリジナルのカーチェイスシーンはなかなかハイテンションだ。車の中、遠くからの固定カメラ、ドライバー視線、路面すれすれ視線、前を走る車からのカメラなど切り替えて、車はタイヤをすべらせながらひたすらLAのダウンタウンを走りぬける。スタントドライバーはコーナーリングの苦手そうなアメ車をぶん回して、おなじみのカーアクションのメニューをつぎつぎこなしていく。
〈静かなカーチェイス〉という『ドライヴ』のオープニングはそこのひねりがすごく粋なんだよね。オリジナルにもヒントみたいなところはある。カーチェイスの中で、ドライバーは一度エンジンを切ってライトを消すのだ。そうやって息をひそめタイミングをうかがってまた爆走する。爆走一筋じゃない、一瞬の静寂がはいる緩急は、この映画の発明かもしれない。映画には2回長めのカーチェイスシーンがあって、主人公は追われる側から追う側になる。2回目もまた一度エンジンを切ってそのあと...とおなじ決め技を出してくる。対決モノの必殺技的な扱いだ。
『ドライヴ』の主人公は、映画のスタントドライバー。つまり物語の中で、フィクションとして『ドライバー』みたいなことをしている設定なのだ。いかにもなオマージュだよなぁ。ヒロインはどっちもいいけど、この映画のイザベル・アジャーニもわけあり風で若いのにすごい風格だ。