ゼロ・ダーク・サーティー


<予告編>
デトロイト』見てからさかのぼってみた。ビンラディンを「発見」して暗殺へ持ち込んだCIAの女性捜査官(ジェシカ・チャスティン)を主人公にしたキャサリン・ビグローの前作だ。前半は、捜査官がいる中東チームがひたすらにデータと格闘しながら、ビンラディンがいそうな場所を絞り込み、組織の上層部を説得して攻撃命令を出させるか、という組織内サスペンスもの。後半は特殊部隊ネイビーシールズが闇夜のなか、ステルスヘリコプターで屋敷を急襲、暗視スコープ付きの兵士たちが(この言葉アレだけど)手際よく敵を倒していくプロセスを、これまた異様にじっくりと描写してみせる。それにしてもジェシカさんはぼくの「染みた」映画ランキング上位の『ツリー オブ ライフ』の天使のような奥様とはおおちがいだ。
本作も「デトロイト』とおなじ事実ベースのサスペンス。国家組織の一員が主人公で、最後のアクションシーンはネイビーシールズの任務遂行、『デトロイト』以上にヒューマンドラマ要素は抑制されて、よりドライな雰囲気だ。それにしても監督は、たとえばスピルバーグ宮崎駿が戦闘シーンや兵器が大好きみたいな意味でミリタリー描写が好きなのだろうか? なぜここまで(『ハートロッカー』から『デトロイト』まで)戦争映画を、べたすぎる言葉でいえば格好よく撮り続けるんだろう。いや、好きと言うんじゃないかもしれない。情緒的に、ロマン主義的に、必要以上にヒロイックに撮ろうという感じはいっさいない。ほんとにドキュメンタリーみたいに、淡々と、しかし実物の迫力は(あえていえば映像的魅力は)十分に観客に伝わるように撮り切る。