アルカトラズからの脱出


<予告編>
1979年、ドン・シーゲル監督。1962年におきた実話がベースの監獄脱出モノだ。
それにしても、この囚人たちは何でこんなにカッコいい衣装を与えられてるンだッ⁈ 固くて重そうなメルトンのピーコート、シャンブレーのシャツ、カーキのパンツ・・・ピーコートなんかは、それこそ軍の放出品を再利用してることがあったのかもしれないけど。
おっさんの一部は共感してくれると思うが、10代20代の頃、おれたちはこの手の服を大喜びして買っていた。そしてクリント・イーストウッドより3周りくらい小さい体をざっくりしたその手の服で包んだ。まだ世界のアパレル生産の中心地が東シナ海沿岸になる前の時代だったから服も靴も普通にアメリカ製で、荒い縫製もなかなか身体になじまない固い皮もゴワゴワのウールも、それがホンモノらしさだと思ってありがたがった。
もちろん自分たちが着ている服がワークウェアという名の作業着で、あるものは農家の、あるものは工場労働者の、そしてあるものは郵便配達人のものだとは知っていた。でも囚人にまで支給されていたとは... あの頃もしそれを知っていたら... 多分それカッコええとさらに喜んだだろう。
と、いう時代の、重くて固くて、でも馴染むと何十年でも持つ服たちの雰囲気が、この映画の雰囲気だ。画面の色合いも何だか自然素材っぽい。典型的な「男映画」で、女といえば、囚人に面会にくる家族の二人だけ、別に花を添えるつもりでもないからたいして美人でもない。囚人どうしのふれあいとか抗争とか、とりあえず入ってる程度で、真っ直ぐにフランク(クリント・イーストウッド)の目標、脱獄に向けた日々のプロセスがひたすらに描かれる。ストーリーにはひねりも意外性も、余計なハラハラさえもない。主人公と同じようにまっすぐその目標に向かってすすむ。
脱獄プロジェクトに参加する俊敏そうな男、どこで見たのかと思ったら『ライトスタッフ』のガス・グリソムの人だった。