アバター:ウェイ・オブ・ウォーター

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神秘の星パンドラの一員となった元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)は、ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と家族を築き、キリ(シガニー・ウィーバー)も養子に迎え、子供たちと平和に暮らしていた。しかし再び人類がパンドラに現れる。ジェイクに復讐心を燃やす大佐のアバター率いる軍隊に森を追われた一家は、“海の部族”の元へ身を寄せる。だが、この美しい海辺の楽園にも、大佐と捕鯨隊の手が迫っていた…

なんていうか、映画の一方の極という感じで、完全に体験にお金を出すエンターテイメントなので映画館で見るモノなのは間違いない。少々いいモニターでも配信でストーリーの絵解きとして見るのでは全然違うだろう。それだとストーリーや設定のアラの比重が大きくなってしまって(そのせいで映画館で見ても入り込めていない人だって大勢いる)だいぶしょぼい体験になってしまうだろう。

腰の座ったエンタメ大作だけあって、ストーリーや設定にはいくらでも突っ込みを許す大らかさと懐の深さとがある。観客たちも映像には深々と満足しながら、でも帰りの夕食では「なんなのあの暑い親父は」「北の国からw」「海兵隊、なんでナヴィ族化しても雰囲気残ってんだ」「ハヤオ感」などとくさしながら盛り上がるというアフターの楽しみも提供している。

ジャンル的にももはやなんて呼んでいいのか分からない。3DフルCGアニメと呼んでしまえばそうだけど、キャラクターの動きも表情もモーションキャプチャーだから全部俳優の演技に負っているわけで、俳優たちは単なる声の出演と思ったら、普通の実写映画と同じ意味で演技しているのだ。パンドラの風景も再現レベルが十分すぎるくらい上がっていて、よくできたアニメの海表現みたいな、作り手の感性を通した職人的表現を見たときの気分とは違っていて、実写映画のCG背景と変わらない。実写を見ている気分でノイズなく映像に浸れるのだ。パンドラの海が地球と変わらなすぎて異世界感があまりないけど、見慣れた風景と近づけて没入感を優先したのかもしれない。

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僕は前作アバターを見てないから、この青い巨人たちをはじめてお腹いっぱい見たわけだけど(多分前作より動きも表情もだいぶこなれているだろう)、なんとも絶妙なキャラクターデザインだ。「動物や非生物の、可愛さに頼らない擬人化」をやり続けてきたハリウッドデザインの蓄積が生かされてる気がする。一部キャラのセクシーになりそうでなりすぎないチューニングも絶妙だ。キャラクターの人物の面影の出し方がまた面白くて、上で書いたみたいな海兵隊チームの、ナヴィ族と同じ青い巨人でありつつ角刈りの荒くれ海兵隊感が混じっている感じなどは、観客の笑いも想定内でのデザインだろう。

バトルの展開はなんだか昔のキャメロンものを思い出す感じで懐かしさがあった。キャメロンとシガニー・ウィーバーの出会いの作品『エイリアン2』にあったみたいな、「決着がついた!」と何回も思わせてまだ終わらせない粘り強い引っ張り方。

本作、前回・前々回でレビューしたストップモーションアニメの労作みたいな、個の作り手の顔が見えるタイプの映画じゃない。製作費何百億のビッグプロジェクトだからね。でもジェームズ・キャメロンという海に強烈な思いがあるプロジェクトリーダーの個の力とかビジョンで引っ張っている作品という感じはすごくする。

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