翔んで埼玉

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<公式> ←驚異的に情報量が少ない

愛しのアイリーン』と同日公開(ブログ的に)。こちらはあんまり書けることがないので、オマケです。おなじく漫画原作だけど、1982年だから40年近く前! 当時はたしかに「埼玉ダサい」の笑いはけっこうあった。23区をイメージでランキングしたり、たしか「地元が埼玉なのを知られたくないOL」みたいな漫画もあった気がする。

それをいま映画化し、しかも2019年でいえば邦画の中では興行収入8位、37億超で、実写では3位だから大成功だろう。地元埼玉でたしか10億くらいいってるはずだ。つまり「埼玉ダサい」ネタ、県民ネタは21世紀でもぜんぜんアリだったのだ。ぼくはそのあたり観客はピンと来なくなってきてると思っていたから意外だった。

東京への集中はたしかに進んでいる。でもイメージでいうと、渋谷でも新宿でも、例えばアパレルの店はテナントのビルに集中してきていて、どこのターミナルでも店舗はあまり変わらない、ってよくある。地方都市のターミナルもアーバンデザインも1980年代と較べると圧倒的に洗練されていて、だささは感じない。情報格差によるあこがれも今はもない。

作り手もその辺を承知で、「実写で描く漫画」的な、行き切った壮大なネタものに仕上げたのかもしれない。同じ埼玉モノだとしても、昔だったらもうちょっと登場人物の心情にそった地域コンプレックスとかをしっとり描くやりかたもあったかもしれないけれど、本作でははじめから「ありえないでしょ」と単純に笑える描写にしている。たしかにところどころ軽く吹くシーン、盛りだくさんだ。大小のネタをびっしりと詰め込んで画面内情報も多い。そして監督がいうように、キャストは1人もおちゃらけず、がっつり芝居している。だからよけいに可笑しい。

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そういう絵づくりだから各県の描写にCGも使っているけれど、主人公が通う超エリート校や豪邸、遊びにいく場所がいやに壮麗でリッチ感がある。学校なんてベルサイユ感あふれる堂々とした建物で、さすがにCGかと思ったらぜんぶロケなのだ。ここはわりと感心した(学校学校2講堂自宅遊びに行く所)。

建物は、ゴルフ場クラブハウスや田舎のテーマパーク的な「城」、文化財である県の講堂、それに結婚式場だ。そうか、こういうデコラティブな施設ってまだまだ作られていたんだなあ。そしてストックとして蓄積されているんだ。日本の映画の製作環境はとにかくお金がない。本作だってたぶん10億はとても行かないだろう。それでも富の残渣で絵になる虚構が撮れる。なんだかそこに軽く感動した。

主演の2人、二階堂ふみGACKTは見事な虚構性。そして第3の重要キャストが伊勢谷友介だ。『愛しのアイリーン』でもけっこう重要な意味をもった役だったね。

■写真は予告編からの引用