預言者

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<予告編>

ストーリー:港町に住む少女アルミトラは父がいなくなってから口をきかない。ある日母の仕事場についていったアルミトラは詩人ムスタファと出会う。ムスタファは幽閉されていた。1人の軍人がやってきて、故郷に帰る船が来ているから港まで連れて行くという。ひさしぶりに市民の前に出たムスタファに、つぎつぎに人々が駆け寄る。ムスタファは港までの道中、問われるまま、愛や結婚や死やさまざまなことについて語ってきかせる......

原作は『預言者レバノンの詩人、カリール・ジブランの作品で、1923年に英語版で出版された、英語圏ではそれなりに知られた本だそうだ。預言者ムスタファが架空の街オルファリーズで自分が乗る船を待ちながら、街のひとびとに語って聞かせる言葉を書き綴ったものだ。

本作はムスタファが主人公だけれど、物語の入口としてアルミトラがいて、ムスタファを巡る物語と、彼とであったアルミトラの成長と母カミラとの物語をストーリーとして置いている。とはいっても作品の構成としてはオムニバス風だ。というのも、ムスタファがジブランの詩を語りだすと、それぞれ違うアニメーション作家の映像詩がそこに重なるのだ。お話を追うつもりで見はじめると、港へ向かって歩くムスタファが何度も止まって、渋い声で詩を語りだすので、ストーリーはそこで停止する。

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原作を読んでいないからどこまでが映画の脚色か分からないけれど、街は中近東を思わせるアラブの文化の香りがする港町で、自動車は走っていて、でも船は帆船だ。時代は20世紀初頭に見える。抑圧的な政府がいるらしく、ムスタファは市民を煽動した容疑で幽閉されているのだ。かれは自由とヒューマニズムの殉教者だ。アルミトラと母カミラもたぶんアニメーション化の脚色なんだろう。

脚本家はかつてディズニーの『アラジン』『ライオンキング』『美女と野獣』にもかかわっていた人で、だからかアルミトラのエピソードは昔のカートゥーン風のスラップスティックになっていたりする。正直そんなにハイレベルな仕事じゃない。

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語られる詩はわりと普遍的なヒューマニズムのメッセージで、愛や命の循環や労働の価値が語られる。それを絵解きするアニメーションはカートゥーン調の絵だったり、切り絵+文様だったり、ライアン・ラーキンやウィリアム・ケントリッジみたいな、パステル画がモーフィングしていくような絵だったり。

ちなみに預言者(The Prohet)は、未来を語る人(予言者)じゃなく、神の言葉を伝える人のことだ。ムスタファは殉教者であり、そういう人でもある。架空の街、オルファリーズは、その綴りからじぶんたちを守り、みちびく者を喪ったひとびとを想像させる。

■画像は予告編からの引用

 

 

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