ペンタゴン・ペーパーズ

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<予告編>

ストーリー:ベトナム戦争中の1971年、ニューヨークタイムスにある記事が載る。 "History of U.S. Decision-Making Process on Viet Nam Policy, 1945-1968" と呼ばれる政府の機密文書、ベトナム戦争に至る政府のあきらかになっていなかった活動や、その見通しが書かれていて、当時すでに反対運動がかなりな勢いになっていたアメリカで、この記事は相当なインパクトをあたえた。ワシントン・ポストの記者も少し遅れてこれを手に入れる。でもこの記事を記載することは政府の訴追リスクがあり、会社経営にもひびく。亡き夫の後をついで社主になったキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は報道部のリーダー、ベン(トム・ハンクス)と経営陣の間でゆれる....

「つくられるべき映画」の代表例。『ミルク』とか『キッズオールライト』みたいな政治的主張を商業映画におとしこんだ作品だ。アメリカは明白なジャンルとしてこれがあるんだね。メジャーな俳優が主演をはり、それなりにお客も入る。本作は女性脚本家が書いて作品化候補リストにあったものを女性プロデューサーが実現させ、監督スピルバーグは『レディプレーヤーワン』撮影後に超速攻で撮影を完了、公開した、というのは良く知られた話。

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政治の圧力に報道が敢然と立ち向かったぜ! という、トランプ時代だからこその話なのはもちろん、それと同等に今の映画らしいのは、当時は超少数派だった女性経営者(しかもメディア企業の)、キャサリンが、報道の大義のためにリスクをとる決断をする(まわりのおっさん役員たちのあれやこれやのプレッシャーをはねのけて)、という女性の自立の話なのだ。

サスペンスとして見てるとあまりスリルは感じなかったというのが正直なところで、やってやったぜー という歴史が示す歓喜のラストも、それよりは『デトロイト』みたいな苦いオチの方がむしろ心に根を下ろす感じがする。

見ていて実感するのは、新聞はメディア(=形のない情報をつくる組織)なんだけど多分に製造業的だということだ。しかも当時は信じがたいペースで物理的に活字を組み、巨大な印刷所で輪転機がぶんぶんと回り印刷された朝刊という製品をつくりだす。

キーボードで記事をうち、画面でレイアウトを決めて、ポチッと「送信」を押す世界とはまたちがう重みをスピルバーグは分かりやすく描写している。

■画像は予告編から引用

 

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