オーシャンズエイト



<公式>
スリルはないね、たしかに。手際のいい華麗な完全犯罪を小気味よく見せる。後半に向けたひねりもちょっとしたオチも適度なスパイスだ。このちょっとしたオチはけっこう笑える。見た人なら分かるけれど「それって、そっちの仕事のほうが本筋じゃねえか!」的突っ込みを禁じえない。
全体にはお洒落でゴージャスで、無駄な暴力がなく、変に影の部分とかもない。チームみんないいバランスで楽しみながら特技を発揮する。どこから見ても格好いいケイト・ブランシェット(今回は貴族的・上流階級風じゃなくちょっとパンキッシュな雰囲気)、サンドラ・ブロック(一番のワル風)は置いといて、郊外住宅地良妻賢母風の雰囲気びんびんで実は盗品横流しを大々的にやっているサラ・ポールソンがいい。ラッパーのオークワフィナは手先の器用なスリ、この手の物語には必須の打ち出の小づち的、またはドラえもん的(つまり必要なものは魔法のように取り出してくれる)存在の天才ハッカー、リアーナ。ハッキングの技術高すぎ、おまけに妹の小学生が天才エンジニアというのも、まあ話をスムースに進めるためのアレだけど、とにかくチームは人種的にもバランス取っている。もう1人の主人公、女優役のアン・ハサウェイはアホなフリで観客もケムにまく。
ターゲットはクラシックなダイヤの名品ネックレス。すり替え用のコピー品をつくって、セレモニーの主役の女優の首にかけさせて…という段取り。「数年練ったパーフェクトな計画」のはずが「なんでそこ、わざわざ大騒ぎを起こしてるんだ?」と思わせておいて、オチでああ、そういうことね、と納得させる。事件後にかぎまわるのが保険屋の調査員というのもいい。彼は法の正義には興味はないのだ。だから会社に不利益がなければいくらでも話が通じる。演じるジェームス・コーデンは『はじまりのうた』でいい人役で出てたね。
そんなわけでちょっと時間が空いた夜の2時間、気持ちよく時間をすごす、ただしい娯楽映画だった。