ムーンライズ・キングダム


これは印象に残らなかったなあ! ウェス・アンダーソン作品はしんみりと残るの(ライフアクアティックロイヤルテネンバウムス、犬が島)とまるでささらなかったの(天才マックス)とあるけれど、本作は完全に後者。
あまりにもざっくり言えば、名声を確立し自由を得たウェスが、手持ちのアイディアと技術と人脈とをほどほどに使ってまとめ上げた感が強いのだ。アイディアはいつもの「あたまはいいけど周囲からどこか浮く少年」とまわりの大人たち、技術はいつもの正面性の強いアイコン的映像、小物で彩る可愛い「自分たちの世界」、人脈はいうまでもなくブルース・ウィルスをゆるーく使い、美神ティルダ・ウィンストンをお堅い福祉係員に、ハーヴェイ・カイテルエドワード・ノートンも記号的芝居のスカウト、あと毎回のビル・マーレイ...といった見て楽しい配役。


そしてローティーンの美少女に昔風のミニワンピを着せて、話が進めばさらに...みたいなサービス。ローティーンたちのピュアな愛を大人が見守る『リトル・ロマンス』型ラブストーリーは、幼い恋愛を大人が見守るという言い訳である種の見世物を楽しんでる部分があるのは否定できないだろう。
話はこの上なく居心地よく(それなりの哀しみとかしんみりはまぶしつつ)寓話的で小綺麗で余計なやつが目に入らない世界の中で完結する。リゾート感あふれる群島が舞台だ。