ナイトクローラー


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ストーリー:うだつがあがらない青年ルイス(ジェイク・ジレンホール)は交通事故現場を通りかかり、そこに群がる映像ジャーナリストに引きつけられる。エグければエグいほどいい値がつく映像。ルイスは安いビデオカムを買い、警察無線を傍受して自称ジャーナリストになる。下衆なテレビショーのプロデューサーにごりごりと売り込み、カメラをグレードアップし、アシスタントを雇い…..ルイスの武器はそこそこ回る頭と何をしようと倫理感にじゃまされないこと。今夜もアシスタントを隣に乗せて、警察無線を聞きながらルイスは夜のLAを流す….

ジェイク・ジレンホールという人はクリスチャン・ベールとならんで役の振り幅が広い役者だ。『ブロークバックマウンテン』の純朴で可愛い青年。『エンドオブウォッチ』のマッチョで一本気な警官。『ノクターナルアニマルズ』の繊細な文学青年(最初はね)。『サウスポー』のボクサー。かなりがらっと雰囲気を変えてくる。たとえばライアン・ゴズリングはどの役でもわりとライアンが見える。ジェイクはすぐにわかる濃い顔だけど、でも役の人間に見える。
本作はジェイクの振り幅の、ある一方向の極だろう。顔を痩せさせただけじゃなく、完全に人相も違えてきてる。 自分の倫理観に、不要なときは「お休みいただく」ことができるサイコパス要素があり、盗品を中古部品屋に売りつけて暮らしているくせにビジネス書めいたポジティブ言葉が染みついている男だ。
物語的には、少し古い感じはした。どぎついスクープ映像を狙うフリーのジャーナリスト。スキャンダラスな映像によだれを垂らして飛びつき、すれすれのコメントで下衆さを隠しているテレビ局。もちろん今も前線で起こってる世界なんだろう。でも1970年代でもほぼ描けた。1960年代にも筒井康隆が描いていた。
目新しいな、と思うのは のある意味地道な会社立ち上げの物語でもあるところ。被写体にむかう姿勢も取引のやり方も、どう見ても下衆で冷酷なんだけど、1人拾った部下と安く買ったしょぼいカメラから初めて、少しずつ機材が充実して部下も仕事に慣れてくる。この辺りはみょうにきまじめな自営業者なのだ(ま、すぐに脱税とかはじめそうだけど!)。