バクマン


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ストーリー:2人の高校生(神木隆之介佐藤健)が原作+作画コンビでプロ漫画家をめざします。めざすは週刊少年ジャンプの連載!あこがれのヒロインや同年代のライバルや同じ夢を追いかける仲間たちもあらわれて…
というわけで、けっこうな評判を耳に、ロードショー期間はやりすごし、DVDにおりて(若干回転も落ち着いて)きたところで満を持しての観賞。ちなみに原作はアマゾンの無料期間にKindleで1巻を読んだだけという、コンテンツに投資しない消費者だ。こんなやつばかりだと日本のコンテンツ産業シュリンクしてしまうじゃないか。だから良い子はみんな毎週月曜になると百円玉をにぎって本屋さんに向かうべきなのだ。それがひいては日本のブンガクも生き延びさせるんだから。
さて、評判ほどにはぼくは感動しなかった。ひとつわりと大きいのは、そもそもジャンプを読まなくなって何十年もたつからしょうがないが、出てくる漫画が、主人公が描くのも、ライバルの「天才」が描くのも、仲間たちが描くのも、ぜんぜん好みじゃないのだ。おっさんだから当然、とはいえない。いまや漫画は全年代用の娯楽だし、中高年がみんな『深夜食堂』や弘兼憲史的なものが好みなわけじゃない。これ比較にもちだすのもどうかと思うけど、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は、作中で主人公の妹が描くホラー漫画がいやにパワフルだったのだ。話そのものは描かれている漫画に依存する部分はないけどね。ここでの漫画はたとえばスポーツ漫画の主人公のプレイスタイルみたいなものだから、試合が面白ければそれでいいはずなんだけど、うーん…..

作り手主人公が作中でつくる作品にどっぷりはまるのが、この手の映画を楽しむ不可欠な条件か、というとそうとは限らない。音楽映画で考えてみれば、素敵だと思う音楽映画の作中の曲がすべてこのみなわけじゃない。この映画がなければ聴かなかっただろうものもある。あぁそうだ…..音楽映画のなかでいうと、やっぱり青少年漫画原作だからか『日々ロック』とおおきくくくれば少し似てるかもしれない。主人公の漫画家をユニット形式にしてチーム感を出してるところはバンドと共通するし、ラストの味わいもそうだ。
はまれなかったもう一つは、主人公2人とヒロインの若者3人のキャラクターが類型的というか記号っぽかったからかもしれない。原作でも彼らはべつに複雑な人間像を与えられてるわけじゃない。ジャンプだし。たぶんそういう微妙なところより、漫画のレベルをあげていくところとかの試合要素の作り込みが面白いんだろう。映画でもかれらはそうだ。とくにヒロイン亜豆の小松菜奈はほぼ「主人公の目標」という面しかなくて、それ以上のあれこれはまったく盛り込まれていない。かぎりなくお人形さんだ。おっさん観客としては山田孝之を筆頭にした編集部のひとびとのキャラクターや、宮藤官九郎の味や、染谷将太新井浩文のコスプレ的役なりきり演技を楽しませてもらいました。

あぁ、とはいえ作画表現とか描かれる漫画の作り込みは新鮮だし手を抜いてない感じはさすがにぼくにだって分かる。「日本の漫画ってこんなんだよ」という紹介として海外の観客にはすごく興味深いコンテンツになりえるだろうし、その目にこたえる映像なんだろう。ちなみに、『モテキ』でもそうだった、東京の街の景色をやけにきらきらと明るめに撮る感じ、全体のトーンをどことなく楽観的に感じさせる効果がたしかにある。