ダークスター


<予告編>
ストーリー:無限に広がる大宇宙。巨大宇宙船<ダークスター>は今日もいく。地球を出て何十年。光速航行のせいか4人のクルーたちは3年くらいしか歳をとっていない(ただし全員ヒゲヅラ)。艦長は少し前に機能停止し、冷凍状態になってしまった。かれらのミッションは地球人が生存可能な天体を探査すること。同時に「不安定惑星」を爆破することだ。宇宙船をコントロールする大型コンピュータはカジュアルな女性の声で話しかける。大型爆弾も人工知能を搭載し、やはり会話することができる。宇宙船には途中の星で確保した、ビーチボールに色を塗ったような形のエイリアンが飼われていた。ある日エイリアンが逃げ出し、船内で追跡をつづけるうちにトラブルのタネが徐々にまかれはじめる….

1974年。ジョージ・ルーカスの頭の中にはもう『スター・ウォーズ』のコンセプトがあって、なんとか映画化しようとかけずりまわっていた頃だ。監督ジョン・カーペンターは26歳、脚本のダン・オバノン(出演もしてる)は28歳。6万ドルの超低予算映画だ。特撮に何かを期待してはいけない。昔の特撮の味わいを楽しむむきにはいろんな発見があってたのしいのかもしれない。でもその筋ではしろうとのぼくから見ると、すぐに突っ込めるような分かりやすいチープさはそんなにない。エイリアンの造形と、重力の扱いでやや「?」となるくらいだ。あとはムダにドラマチックなことを起こさない「宇宙航行のたいくつな日常」の映画だから、この宇宙船はこういうものだと納得してしまえば、そんなにあれこれ考えずに見られる。『電撃フリント』の特撮よりもふつうだ。

この世界、当時はどんな感じだったんだろうね。1969年の『2001年宇宙の旅』は別格として、1960年代から『スター・トレック』シリーズとか、宇宙もの特撮は観客におなじみだったはずだ。クルーたちと対話できるマザー・コンピュータはもちろん『2001年』の影響だろう。船内にもちこんだエイリアンが脱走して、迷路めいた船内でクルーとの追跡劇がはじまる….この展開。これは新しかったかもしれないね。もちろんその後の『エイリアン』だ。ストーリー・脚本担当は本作の脚本、ダン・オバノンだから、こちらは直接アイディアを展開したんだろう。本作のエイリアンはたいして怖くないけれど、ホラーになりそうな気配は十分にあるし「この部分怖くしていくと『エイリアン』になるな!」と思わせるシーンがちゃんとある。ちなみにエイリアンを追いかけるクルー役はオバノン本人だ。

宇宙船での生活が「おわらない日常」となってしまった4人の青年。ヒゲも髪ものびているし、作業着風の制服だし、業務が終わると汚らしい部屋でだらしなく食事するしながらぐだぐだとした会話をし……..この宇宙描写はどこに源流があるんだろう。雰囲気はどことなく『ゴーストバスターズ』に引き継がれていく気もする。女性の声で、冷たくなく、やさしく話しかけるコンピュータは、まるでだらしない大学生たちの、優等生の同級生みたいだ。そしてころころ変わる指令にへそを曲げる人工知能付き爆弾は、もう少し年下のひねた少年みたいなのだ。

ラストはなんとも不思議な抜けの良さがある。監督ジョン・カーペンターの作品のなかではぼくは『クリスティーン』が好きだ。なんとも言えずすきなのだ。ダン・オバノンはこのあとアレハンドロ・ホドロフスキーに声をかけられて『デューン』制作の壮大な(幻の)プロジェクトに参加することになる。