JIMI 栄光への軌跡


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ジミ・ヘンドリックスがメジャーデビューし、モンテレーフェスで伝説のライブを見せるまでの日々。それはかれにひきつけられて、かれをささえる女性たちとの日々だった。

ひじょうにあっさりした映画。ジミ自身、わりともの静かで繊細なキャラとして描かれていて、ドラッグもたいしてやらないし、ロケンローラー的な無茶もぜんぜんしない。女たちというけど、彼が出会う女性は3人だけ。そもそも酒池肉林タイプじゃないのだ。そしてお話は無名のバックギタリストだったジェームスがイギリスにわたり、アメリカでブレイクする直前までの、まだまだ静かな日々だ。実在ミュージシャンたちとの絡みもクラプトンとのジャム、ビートルズがライブに見に来る、というくらいであまりない。監督は伝説になるまえの素の青年ジミを描きたかったんだろう。ジミ役のアンドレ・ベンジャミンはもう40歳だけどよく似ていて、20代前半の役にそんなに違和感がない。 
撮り方がなんだか面白かった。う〜ん、なんというのか、むかしのややアート指向低予算映画風とでもいうのかなあ、このあたりうまくいえないんだけど、独特の既視感と、そういう意味では1960年代末の時代にあってるのかどうなのか、なんにしても、もの静かだけどなにかいいたげな雰囲気だ。おもうにこれ、そうとうな小品として作られた映画なんじゃないかなあ。このあっさり感、人の少なさとかは、ようするにプロジェクトの規模の小ささなんじゃないかと思うんだけど。音楽自体、許諾がえられなかったから、オリジナルの音も映像も使っていない。
ジミ・ヘンドリックスは、たぶん黒人でありつついわゆるブラックミュージックの外で売れた人としては最初のほうになるんだろう。特にロック/ポップスの世界ではね。そのあたり当時の空気は正直よくわからない。もともとの黒人音楽としてのロックンロールはあり、無邪気にあこがれて取り入れたビートルズストーンズがうれて、白人の音楽としてのロックにもR&Bの香りはしていたんだろうけど、そこに当の黒人がはいるとポップススターとしてはむずかしかったのか…….当のミュージシャンたちにリスペクトされていたのはまちがいないんだろうけどね。

ま、とにかくなんだか静かな映画でしたよ。ノイジーなギターはぎんぎん鳴ってるけど。ちなみに、途中であやしいエキゾチック美女につれられて(妖しかったよね、彼女はエチオピア系の女優だそう)紹介される黒人のアジテーターがいる。かれの挑発的なことばにもジミは乗らないで「やってれば? オレはラブ&ピースだから」くらいのテンションだ。かれは黒人活動家マイケルX。一時はジョン・レノンなどミュージシャンの支持者も多かったけれど、のちに大量殺人者として有名になる。かれがネタのひとつになっているのが実話ベースの犯罪モノ『ザ バンクジョブ』だ。