もらとりあむタマ子


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地方都市と女の子もの、かつ「あたし何かになりたい」という思いと「こんな家、こんな田舎でたい」という思いが結合しているあたり、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』とも共通してる。地方都市・父と娘・アイドルに、という設定は『あの娘はやくババアになればいいのに』とも似てる。ほんとに淡々としたお話だ。実家に戻ってきてごろごろしている娘(前田敦子)がほぼひたすらゴロゴロしている秋〜冬編。ちなみにこのパートは3日で撮影されたというからすごいね。撮れちゃうんだ。春編では娘は急にアイドルにめざめ、プロフィール写真を撮って…….あれ、なにかに送ったんだっけ? わりと前だから忘れてしまった。夏編では離婚されて1人になっている父に結婚相手候補があらわれて娘がそわそわする話。でもすべては何かが起こる前のことだ。
とことん穏やかである。前田敦子はシスコン系妄想漫画とは真逆の「じつは家にいる女子は意外とうざい」ありようを全身でみごとに体現している。いえすいません。弟の立場にいたわたしの偏った体験にもとづく偏見ですもちろん。この娘も、かいがいしい父も、なぜか娘の弟分にさせられている知り合いの中学生も、その彼女も、みんな愛玩動物のようにかわいく見られる。

「かわいく見られる」と書いたけれど、この映画のいいところはヒロインがべつにかわいくないところだ。ぶっきらぼうだしどこかアホだし、まともに喋るところでもぼそぼそした喋りだし、だいたい一度もかわいいファッションをしていない。前田敦子のシルエットは服の補正がないとものすごく普通だ。いいじゃん、そんなにかわいくなくても。みんながみんな。なんていうか女の子を解放するみたいな話なわけじゃないですか。コミュ力なくても意識高くなくてもなにか持ってなくても、かわいい子やってなくても、居場所はちゃんとあるんですよ、ていうね。