スキャナーズ


<予告編>
ストーリー:スキャナーズ”と呼ばれる超能力者たち。巨大企業コンセックは彼らを集めてコントロールしようとしていたが、最強のスキャナー、レボック( マイケル・アイアンサイド)は別の組織を作り、スキャナーたちを殺していく。研究の責任者ルース博士に拾われた記憶のない男 ベイルもまた、レボックに匹敵するスキャナーだった。ベイルは博士の指令で、組織に追われながら陰謀の核心にせまる.....

じつにいいですよこれ。1981年公開、クローネンバーグ38歳の時の作品だ。初監督からは10年以上たっているけれど、初期作品ぽいよさがびんびんにある。ぼくの感じでいうとカナダの『鉄男』。そんなに予算はかかっていない。話はこびもシンプルだ。でも初期作品ならではの鮮烈なアイディアで、映画的アイコンとなるようなビジュアルイメージを残した。役者のハイテンション演技も印象に残る。この作品は『鉄男』に比べれば、画面的にははるかにノーマルだ。だけどとにかくアレがね。超能力対決のシーンが。大友克洋における『童夢』のおじいさん壁めり込みとならぶ超能力表現のマイルストーンだ。どうみても大友は『アキラ』を描くときにこれを踏まえてる。『童夢』の単行本発行も『アキラ』連載開始も1983年。この映画見てたら頭にこびりついてないわけがない。

とにかく序盤レボックが力を見せつけるシーン、それからクライマックスのベイルとレボックの対決シーン。このあとの作品でも、肉体の変容をひたすら描くクローネンバーグのあの......って、大有名なシーンなんだけどさっきからどんなシーンか、その一言をガマンしている。もし知らない人がいたら知らないまま見てね。画像検索とかしないでさ。あと、そこまで有名じゃないけれど、超能力×電脳テクノロジー対決もいま考えるとそうとう新しい。なにがってネット経由のバトルなのだ。インターネットのプロトコルTCP/IPが標準化されるのが1982年。電脳モノSFの代表作『ニューロマンサー』が1986年だ。メインフレームのコンピューター周りの接続はあっただろうけど、意識が電話回線経由でシステムにアクセスするって、マニアの意見は知らないがやっぱり新しいんじゃないの?SF史的に。ただし、さすがにその描写にはサイバー感はない。火花が散ったり、なぜかコンピューターが派手に爆発したり、どっちかというとチープだ(そんな予算がありそうな映画じゃないし、全般にその年代なりの映像ですけどね)。

そんな表現上の面白さ以外も、いちおうちゃんとした謎の解明あり、大企業の陰謀あり、血の因縁めいたものありであきない。そしてヒロインのキム(ジェニファー・オニール)のイタリア貴族めいたノーブル美人ぶり。当時32、3歳とは思えない大人顏だ。しかし超能力シーンは、特撮以外はCGとかももちろんないし、基本的に超能力者たちの不思議な力の入り方と、あとは顔芸だけで表現する。パワーを発揮している方も大変だが、くらってる方もまた「頭の内圧があがってる」的なのを顔で表現する。ただ顔に力をいれればいいってものじゃない。どう演出したのか、役者の発想なのかしらないが、とにかく悪役ヒーローのアイアンサイドが抜きん出てるのだけはたしかだ。