ニューワールド


<予告編>
ストーリー:1600年代初頭、スコットランドからの開拓の船団が新大陸の東海岸にある静かな入江に到着する。船団の士官、ジョン・スミス(コリン・ファレル)は軍から追放される。そんな彼を迎え入れたのは先住民たちだった。先住民の王の娘ポカホンタスクオリアンカ・キルヒャー)は彼にひかれる。しかしジョンはいつか母国に帰らなければならない…….
正直そんなに期待していなかった。ポカホンタスものだし、白人男性とローカルの美女の恋の物語なんていい気な話じゃん、とね。ところが意外とよかったのだ。魅力のかなりの部分は役者によっている。ヒロインのクオリアンカがちょっとほかの女優にないような存在で映画にかがやきとあたたかみを与えているのだ。彼女はペルー先住民の地を引いたドイツ生まれ。撮影当時はまだ14歳だ。見慣れた美女のスタンダードからすると、ちょっと顔が長く四角くてアゴさん要素もあるけれど(昔の一色紗英的ともいえる)、そのピュア感は出そうとして出せるものじゃない。ネイティヴアメリカンの女優だってきっとオーディションに来たはずだ。でも彼女の発見で映画のこの感じが成立したのはまちがいないだろう。新しい世界とみしらぬ世界の人、そして自分の未知の感情にとまどいながらもまっすぐ進んでいく王女。草原のまん中で、カメラ目線の笑顔で自由に踊る...グラビアアイドルのイメージビデオでもほとんど同じ趣向はある気はするが、いったい何が違うのか。

そして、いうまでもないけれど「文明化」される前のアメリカを描いた風景はやっぱり美しい。植物の生き生きした姿、空や水面の美しさ、とくに太陽が葉をきらめかせ、風が草原に波を起こすような「現象」をとらえる視線。この透明感は、落葉の森の木漏れ日や逆光でみた明るい葉のそれだ。この映画もまたほとんどすべて自然光でも撮っている。クレーンやドーリーも使わず、ハンディかステディカムだ。フィルム撮りでデジタル加工は映っている鳥の色を変えただけだという。撮影はエマニュエル・ルベツキ。この人のフィルモグラフィを見るとおおっとうならざるを得ない、べつにナチュラルな映像専門というわけじゃなく、一つ前の『ゼロ・グラヴィティ』の撮影監督でもある。

ロケ地はてっきりニュージーランドかなにかかと思ったら、史実に近いバージニア州なのだった。このあたりの気候は湿潤温暖気候で、ざっくりいえば日本の本州と同じだ。冬でも極端に気温が下がらない。夏は30度くらい。ただ1年を通して平均して雨が降る。気温はそれなりに温暖だけど、植生は落葉広葉樹と針葉樹の、ようするに信州や東北みたいな森だ。ナラとかクルミとかユリノキ(ちなみにアメリカ人はポプラと呼ぶ場合がある)やイエローパイン、それに湿地帯はヌマスギとかだ。こんな自然な海辺湿地帯や河があるんだなぁ...草原はちょっと荒地風だったが。