ソーシャルネットワーク  デビッド・フィンチャー


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2003年が舞台で、しかも今に完全につながっている実在のネットビジネス。それをいきなりクラシックなトーンで撮っているところがいい。
最初のバーのシーン。マーク(ジェシー・アイゼンバーグ)はフード付きのパーカーを着て、エリカ(ルーニー・マーラ)はもっとクラシックな、いつの時代か分からないような服と髪型だ。バーも古くさい。30年前が舞台でもぜんぜん違和感がない。エリカに振られたマークが走り出す、ハーバードの学生寮の建物も古典様式だし、室内もそうだ。マークがハッキングしている画面は、専門家から見てもリアルらしいから、そうした現代性はちゃんと押さえているんだろう。その上でボストンの古い景色にあわせてすべてを昔話のように撮る。BGMだってそうだ。
監督は決してそうは言っていない。ちゃんと2003年のアイビ−リーグの学生生活を描こうとしたんだと。そうなのかもしれない。でも、これをもっとずっと、「今」の匂いぷんぷんで撮ることはいくらでも出来たと思う。いくらでもあるでしょう?そういうの。
それに、物語の必然もあって、話はつねに過去の回想の形になっている。じっさいは2〜3年前くらいのことだろうけれど。そういう語り口やトーンのおかげで、本来あまりにも現代的なこの物語は、ある部分時代性からはなれ、おおげさにいえば神話のなかにおさまって、普遍的な青春の成り上がりと喪失の物語としてすっと入ってくるような気がする。