イングロリアスバスタ−ズ


普通に面白かったがなんかコメントが出てこない。本作も『僕らのミライに逆回転』とおなじく「映画についての映画」で、映画内映画が出てくるが、単純な映画愛の物語ではもちろんない。というかそれ以上に「言葉の映画」。『Kill Bill』のルーシー・リューの名セリフ「ここからは英語でしゃべります」コンセプトがさらに先鋭化されていた。出だしからドイツ語フランス語英語の使い分けが人の運命を決め、別の場面では言葉の使いかたがきっかけで諜報部員が危機に陥り、ある場面ではいい加減なイタリア語が笑いのネタになる。
事実上の主人公、ドイツSSのランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)はマルチリンガルでインテリの官僚タイプ。もう一人の重要なドイツ軍人、戦争の英雄であるフレデリック一等兵ダニエル・ブリュール)は、ドイツ人というより、アメリカの高校や大学の優等生スポーツエリートの雰囲気そのままで、自信たっぷりで、だから人当たりはいいが決定的に鈍感、みたいなキャラクタ−だったのが面白かった。クラスの中でそういうヤツにしいたげられてきたであろうタランティーノの怨念か。
ちなみに途中で、バスターズ+イギリス諜報部員+ドイツ兵+SS将校+居酒屋関係者の銃撃戦シーンがあるんだが、見せ場のひとつなわりに(上記の設定からしてすでにそうだが)錯綜しきっていて、銃撃がはじまってからの流れがつかみにくくカタルシスがないのが残念。