僕らのミライへ逆回転


<公式ないので参考(imdb)!>>
レンタルビデオ店の店員が、テープから消えてしまったハリウッド名作を仲間だけでリメイクするというこの話、かなり濃いめの映画愛の映画だ。泣ける映画愛映画の古典といえば『ニューシネマパラダイス』につきるが、この映画、とくに終盤の描写は『ニューシネマ』へのオマージュといってもいいくらいだ。「老人映画」的しんみり感もきちんとある。だから、シチリアと比べてしまうとたいした歴史もない町が舞台の話だけど、特に後半にかけては怒濤のいきおいでノスタルジーになだれ込んでいく。町の仲間たちが、最初はビデオ店の客として、つぎに彼らのオリジナル作品のファンとして、出演者として、協力者として、そして一団となった観客として映画を中心に集まってくる、ファンタジックな物語。とにかく町のみんなが映画が大好きなのだ。最後のオチなんかほとんどジュゼッペ・トルナトーレ的泣かせと同質。ヨーロッパの小さな村の物語みたいで、今のアメリカの町にこんなコミュニティーあるのかと。
ちなみに物語の舞台はPassaicやHackensnackというニュージャージー州の町。マンハッタンから15kmくらいのところにある。日本で言えばなんだ?溝の口みたいな感じだろうか。ちがうか。ただ真っ先に浮かんだ地名を今書いた。Passaicのほうは、ストリートビューで見てみると、クラシックな外観の商店がならんでいて映画のレンタルビデオ屋周辺の雰囲気がある。

序盤はジャック・ブラック(ジェリー)がひたすらうざいキャラクターを演ずるので、いかにも好青年キャラのモス・デフ(マイク)に感情移入する観客は、徐々に「かんべんしてくれ」という思いを高めていくことになる。しかし物語が核心に入り、二人が映画を撮り始めると、その「映画内映画」でのジェリーの役者ぶりが本領を発揮し始めて、ただコスチュームを付けて立っているだけで十分OKな雰囲気を醸し出していくことになる。
マイクは真面目だけどいまいちダメ感にさいなまれる青年だった。ところがいざ映画を撮りはじめると、ホームビデオを無編集の一発撮りで仕上げていく、即興の天才監督になる。パクる作品のカットがぜんぶ頭の中に入っていなければもちろんそんなことできない。彼自身が何度も何度も店にある作品をrewindしていたんだろうなあ、という映画だ。