スカイ・クロラ


<公式>
監督はなんどもこの作品は「お仕事」だという。原作、脚本をあたえられて、キャッチーなアニメ表現を求められて、得意の兵器シーンも十分見せてね、という条件のなかで割りきって作る。そのなかで「ヨーロッパ映画的な空気感をだした」と監督はいう。ウェルメイドなお仕事だ。うーんでもなあ、ヴェンダース的とか言われても、出演者はませた少年少女なのだ。あと、なんでパイロットたちが通うダイナー(パイロット目当てのプロ女性が集まる)がアメリカ風なんだ?という不思議がある。ここの描写はなんだか『ライト・スタッフ』みたいなのだ。
フルCGの戦闘機は、サウンドデザインもあって空中戦シーンは文句なしだが、地上のモーションが気になる。CGで単純なモーションで動かすと、物の質量表現にいつも不満がのこる。なぜかというと慣性を表現していないから。動き出しの重さとか、方向が変わるときの横Gの感じとかだ。あと微振動か。
地上パートは従来型のセルアニメで、極端に動きがすくない。セリフをヘらし、ドラマ自体も平板、キャラクターは単純化されて、人形劇のように動かない表情の中に感情を読み取る、という見方を要求するようになる。ハイコンテクストな日本人観客向け表現で、同時期に公開された『ポニョ』の記号的な感情表現と真逆だ。ただ残念なのは演出をこえて動画をへらしすぎてクオリティが下がっている部分もある。主人公と同僚パイロットが女の子二人とオープンカーでドライブするシーンなんて典型だ。
背景はジブリのスタッフたちが描いた手描き風とCGフレームにテクスチャーを貼り込んだものとフルCGが入り乱れる。気にしだすとちょっとヘンだ。