ヴィットリオ広場のオーケストラ

Trailer


あるオーケストラ(バンドともいえる)を結成してデビューコンサートを行うまでを追うドキュメンタリー。ひとついえることは、この作品、映画としてのできは大したことはないということだ。
なんでオーケストラを作ろうとしたのかというところから、メンバー集めの苦労、コンサートまでに主催者がぶちあたるありとあらゆる問題、うまくいかないリハーサル、そして当日の成功、と、ほぼ時間通を追って場面はすすむ。 分かりやすいけれどなんだか説明的で、特に肝心のオーケストラの演奏場面が少なく、どうも映画的なカタルシスがない。 撮っている人間が、オーケストラの企画者の同士なので、企画者の苦労ばかり印象に残る。 まあそいつの話はもういいじゃないか。したくてしている苦労なんだから。

このオーケストラ、ローマのある広場にあつまる各国の移民たちにスポットをあて、(政府の移民排斥法に反対するために)、また広場にある古い劇場を復活させるために、各国の伝統音楽ができるミュージシャンを集めて、ごった煮的音楽をやろう、というものなのだ。そもそもの目的がそうなので、音もイメージされてはいるんだろうけれど、「意味」を重視してメンバー探しをしているように見える。いい音を持っているミュージシャンより「○○人」を集めたいだけなのか?それって本当に、彼らの音楽、彼らの文化をリスペクトしているのか?という疑問はリハーサル中にも少し浮かんでくる。

ただ、それはおいといて、集められた各国のミュージシャンは見ているだけでも楽しい。チュニジアの色男シンガー、エジプトの苦労人風ヴァイオリニスト、キューバの人格者トランペッター、お調子もののタブラ奏者、それを苦々しく見るエリート系シタール奏者。エクアドルの弾き語り男、ガレージに住んでいるアルゼンチンのパーカッショニスト。ロマのストリートミュージシャン、モロッコのウード弾き、セネガルのいかにも、というナイスボディーのジェンベ叩き。
彼らが試しに演奏してみせるシーンだけでも見飽きない。それにイタリア人のベーシストやアメリカ人サックス奏者など・・・おっさんたちも多いが、それぞれにチャーミングで、それ以上に自分の音楽を持っていると言いきれるところが素敵だ。

本当は自分の文化に誇りを持っている彼らが、他のよくわからない音楽とごった煮セッションをすれば、当然いろんな摩擦やあつれきや音自体の苦労などがあったはずだ。 異種セッションなんてそんなに経験ないはずだしね。 『コミットメンツ』なんかもそうだけど、バンド結成映画は、最初まとまらなかった音がだんだんと締まってくるあたりが面白いんだけどな。ざんねんながらその辺りの苦労や面白い部分は取り上げられていない。コンサートの当日には音はまとまり、途中でおおげさにさわいでいた色々な問題もいつのまにか解決したようで、いい感じに演奏は終了する。オーケストラは常設になったそうで、「アポロ11」という名で活動しているそうだ。 ラストの紹介&演奏シーンが楽しい(曲は妙にポップだが)。

結論。善兵衛の音楽好きは、(映画好きというより)見てもいんじゃね?