リーピング

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まずはだまってアマゾンのDVD特別版ページを読むべきだ。アマゾンのレビューで、その作品が散々けなされているのはよくあることだけれど、商品説明で 『安手のありきたりな』 『もとから出来の良くない映画』 『さらにお粗末となっている』 『オリジナリティは皆無』 などと全編にわたってこきおろしているとはこれいかに。「日本一まずいラーメン」式の宣伝手法なのか。と思ったら、Amazon.comのサイトにも、この妥協なき商品説明(原文)がのっている。 じゃあしょうがないね。 この映画、公開時から、映画のカラーを根本的に誤解させる 『イナゴ少女、現る。』 などというキャッチでプロモートを展開していた。ワーナー、なぞめいている。

というわけで主役はやはりイナゴ少女なのか、と思って見てみると、どちらかというとボクサー熟女である。「ミリオンダラー・ベイビー」の主演、ヒラリー・スワンクが、辛い過去を負って、宗教的なもののインチキさを科学で暴く学者の役であらわれ、あやしい村の秘密の解明にいどむ。しかし科学はいまいち機能せず、彼女はその間にも次々と起こるショッキングな出来事に振り回されるばかりで、セクシー狂言回し以上にはなっていない。
イナゴ少女、アナ・ソフィア・ロブは、「チャーリーとチョコレート工場」にも出た正統派美少女。村から疎外されてとんでもない湿地帯に住む貧乏少女で、どうもあやしい力を持っているような、という設定。役にあわせて、言い訳っぽく汚れメイクをしているものの、つねにブロンドの髪がサラサラ状態なので、湿地帯の貧乏人にしては違和感がある。

物語世界は、旧約聖書の「十の災い」をモチーフにした不気味な出来事が現代アメリカにおこる、というオカルトホラー。日本でいえば八つ墓村のような僻地の閉鎖的な村が舞台だ。ぬめぬめとした、不透明な沼が村はずれにある。 もちろん村にはよそ者にあまりフレンドリーじゃない有力者がいて、村人たちは例に漏れずなにか秘密を隠していて、ヒソヒソとこっちを見ている。そしてナゾが解けていくにつれて、それこそ八つ墓村のような、過去のどす黒い因縁が掘り起こされる。「悪魔」もだいじな小道具だ。

そんな感じで、設定はそれなりにそろっているくせに、いうほど不気味でもない。全体に妙にポップである。早いはなしが怖くない。「災い」のシーンはショッキングに見えるように色々工夫しているけれど、数えまちがえか、十もなかったような気がしてしょうがない。村や村人はなんだか普通だし、イナゴ少女も、ほんらい怖がらせる役なのに、不気味に見せるよりは、さっき書いたみたいにきれいに撮っているので、あまり恐ろしい人に見えない。そしてクライマックスに最後の「災い」がふりかかるんだが、派手に盛り上げすぎで、逆にスリルがなくなり、なんだか気分が萎えてしまう。
DVD特典映像では研究者が「十の災い」について科学的に謎解きしている。こちらはちょっと面白い。民放の特集番組なら一本できそうだ。

結論。『善兵衛が震撼しきれないオカルトホラー風味!』