ナイスの森


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2006年公開か・・・・なんというか微妙な年月が経過した今レビューを載せることになにか意味が。
まあいいや別に。
これを見て一番に思うのは日本における「クリエーター」の立ち位置である。この映画、3人の監督のショートストーリー(連作)のオムニバスになっている。監督は石井克人、三木俊一郎、ANIKIというCMディレクションの世界では有名な人らしい。が、石井しか知らん。映画の世界で、ある程度実績がある=自分本位で映画が取れるスタンスにある のはたぶん石井だけだろう。
しかしこの映画では、3人ユニットの企画だからなのか、自由そのものでそれぞれの世界を描くことがゆるされ、それほどシビアに商品として仕上げる責任を負わされているようにも見えず、その出来不出来がクリエーターとしての生命を左右するほどのものであるようにも見えない。簡単に言えば商業映画なんだけど遊べているわけで、そういうぬるい環境をどうやって彼らが手にしたのか、本業のCM制作での実績と名声のおまけなのか、あるいはその遊びそのものが商業的価値があるものとみなされているのか、とにかく彼らの遊びの詰め合わせは2時間以上の長編劇場映画として成立しているわけだ。
その世界のある種のぬるさは3人の監督のチルディッシュな感覚につながっている。そしてそのチルディッシュなテイストが悪い感じでないのもたしかだ。チルディッシュな感覚が商品として価値をみとめられ、作り手はチルディッシュなままビジネス感覚とスキルは持っていてきちんと商品としてしあげていく。そういうチルディッシュな世界を愛する(年齢としては)大人の消費者がそれを支えてくれる。これはじつはあんがい日本ならではなんじゃないか、とひそかに思う。子供の顔をもったまま、大人のスキルを持つ。生物学にネオテニー幼形成熟)という言葉があるけれど、ふとそんなものを思い浮かべる。


いくつもエピソードがあって、基本的にははげしくシュールであり、典型的ドラマに期待するような満足感とは無縁である。グロ系も存在。とはいえ切り口もテイストも出演者も違うのであたりはずれも上手いぐあいにミックスされて、見た印象としてはあんがい悪くない。どこかで「アルバムを聴くように見てほしい」と監督の1人がいっていたような気がするけれど、たしかにそういう見方がいいんだろう。1本を通して見ることを強制されると長さを感じるはずだ。ただ、こういう遊びの世界は、イマジネーションだけとりあえず広げてしまい作り込みの部分で詰めの甘さが目立つと文化祭化するおそれがある。正直にいえばそんな印象を受けるパートもあった。

とはいえみなさんプロである。CMという、映画以上にクライアントの制約を受けて何かといえば結果をリサーチの数字で出される世界で実績をつんできたプロである。やりたいほうだいやりつつも、きちんと保険はかけてある。ひとつは笑いであり、ひとつは寺島進浅野忠信庵野秀明ら、この手の世界ではわりとおなじみながらにやっとさせられるキャスティングであり、もうひとつは大量に、ほとんどてんこ盛り状態で出てくる美少女たちである。どのエピソードも女の子たちはほとんど有名女優ではないがひどくかわいい。ベタすぎる対処法だが、もちろん効果はある。あきらかに再見意欲がわいてくる(DVDだからだけど)。とくにANIKIのパートで加瀬亮の彼女役で出てくる西門えりかのかわいさにはびびらざるを得ないだろう。
あと三木俊一郎のパートでいろいろと出てくるぬめぬめしたクリーチャー。あのぬめぬめ感の源泉はおなじくぬめぬめしていた「エイリアン」第1作のギーガー製クリーチャーかとも思うが、どっちかというとクローネンバーグの「裸のランチ」に出てきた気色の悪い虫系にも似ている気がした。


結論。「善兵衛が微妙ながらも部分的に満足!」